糖尿病
糖尿病患者がインプラントを受けられない理由
糖尿病は血管を傷つける
糖尿病は、ブドウ糖が血液中に一定基準以上存在する症状です。健康な人の場合、糖質を摂取すると小腸から吸収され毛細血管に移行して、膵臓から分泌されるインスリンによって代謝されます。しかし、糖尿病の場合、インスリンの分泌が低下している、インスリンの働きが弱くなるなどして、血中にブドウ糖が残留してしまいます。このブドウ糖はサイトカインという炎症物質を惹起して、血管の内膜に炎症を起こし血管を傷つけます。傷ついた血管は修復されますが、その際に厚くなり、それを繰り返すことによって内部が狭窄してしまい血流障害を起こすのです。
動脈硬化による合併症がインプラント手術のリスクになる
糖尿病は上記のように動脈硬化を進行させてしまいます。その結果、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などの疾患を引き起こします。この合併症が突然の心不全や発作などインプラント手術へのリスクとなります。また、糖尿病は炎症反応の低下をもたらし、傷が治りにくくなり、感染症にもかかりやすくなります。このこともインプラント治療には大きなリスクとなるのです。
糖尿病患者がインプラント治療を受けるには
インプラント治療を受けるには血糖値のコントロールが重要
糖尿病でもインプラント治療を受けることは可能です。しかし、それには血糖値のコントロールをしなければなりません。糖尿病では、薬を飲む前に生活習慣の改善をすすめられると思います。その段階で運動や食生活を改善して血糖値が安定すれば問題なくインプラント治療が受けられるでしょう。しかし、薬を飲んでいる場合には、血糖値が安定していない人もいます。約1ヶ月程度の血糖値の平均値であるHbA1cを参考にコントロールにつとめてください。インプラント手術を受ける目安は。ほかの外科種々と同じくHbA1cが6.9%未満です。
糖尿病でインプラント手術を受けるときの注意
血糖値がコントロールできていない糖尿病の人は、低血糖発作を起こすことがあります。意識障害を伴いますので、インプラント手術では大きなリスクとなります。また、手術ストレスで高血糖発作の可能性がありますので、生体モニターでの管理、ストレス軽減のため静脈内鎮静法ができる歯科医院での治療を考慮しましょう。
糖尿病患者のインプラント症例
糖尿病に罹患している人に対しておこなった、インプラント治療について60ヶ月の追跡調査を実施した結果です。結果としては、まず、術後に重大な合併症などは発生していません。生着しなかったのは、7人の患者のうち、血糖値コントロールが不良な人の1本のみという結果で、生着率は86.7%、同時期におこなった通常健康者のデータが94.7%で統計学的に5%の差が出ました。しかし、コントロール不良例を除けば89.7%となり、通常健康者のデータと統計学的には有意差がありませんでした。このことから、糖尿病がある場合でも、血糖値が適正にコントロールされていれば、インプラント治療は可能だといえます。
参照:日本口腔インプラント学会誌第17巻第3号「糖尿病患者に埋入したインプラントの臨床経過