国内外にあるインプラント学会リスト
インプラントの指導医・専門医・認定医制度について
インプラント治療を行っている歯科クリニックのホームページを見ると医師がインプラントに関する学会に所属し、指導医や専門医、認定医となっていることが紹介されています。ところが、このインプラント治療に関する学会は1つだけではありません。歯科に関連するものだけでもたくさんの団体があるのです。
そこで今回は、インプラント治療に関する学会を中心に調査をしてみました。自分が通う歯科クリニックの先生がどれだけすごいのかを知るきっかけになるかも知れないのでチェックしてみてください。
インプラント学会の資格を比較
インプラント学会の多くは「指導医」の資格を特に高い資格としています。そこで、日本国内における「指導医」資格を取得するための条件の中から、必要な症例数、必要な難症例数、更新期限の3軸で比較をしていきます。
症例数とは、文字通りインプラント手術を経験した数です。1症例の数え方は学会によってまちまちで、同じ人の手術でも、上顎と下顎で2症例とカウントする場合もあります。上顎・下顎合わせて1症例とする場合、1口腔症例とするのが基本のようです。
難症例とは、GBRやサイナスリフトといった、骨造成・骨造形が必要なほど骨吸収の進んだ方の症例数です。更新期日は免許の更新が必要な期間を表しています。
インプラント指導医学会比較表
学会名 | 症例数 | 難症例数 | 更新期間 |
---|---|---|---|
ICOI | 外科・補綴処置で60口腔症例で75本以上 | 骨造成等10症例 | 3年毎 |
日本口腔インプラント学会専門医 | 100症例(上部構造装着後 3 年以上経過) | 多数歯欠損15症例 骨増生5症例 | 5年毎 |
ISOI | 50症例(術後3年以上経過) | 上顎洞挙上症例を含める | 5年毎 |
日本顎顔面インプラント学会 | - | - | 5年毎 |
インプラント学会に加入する意義とは
同じ分野の医師たちによる情報共有をおこなう
学会とは、同じ分野の学術研究をする研究者の団体のことをさします。医療にはさまざまな分野があり、インプラント医療もそのひとつです。歯科医師たちがインプラントに関する学会に所属することで、インプラント医療における知識や新しい技術、研究発表などで情報を共有できます。また、同じ分野の同じ志を持つ医師たちが集まり、学んだりコミュニケーションを図ることが、医療の発展と向上につながると考えられています。
インプラント学会を紹介
同じインプラント治療であっても、知見や学術の方向性にそれぞれ特色があります。こちらではそれぞれのインプラント学会の特徴などを紹介します。
日本口腔インプラント学会
超高齢化社会での歯科医療の発展を目指す
1986年に「日本歯科インプラント学会」と「日本デンタルインプラント研究学会」を合併し発足した日本口腔インプラント学会。2009年には会員数が10,000人を突破するなど、多くの医療従事者の支持を得ています。超高齢化社会への口腔医療のあり方を重視し、患者に寄り添う医療の発展のため、一般向けのメディア発信や講演会もおこなっています。
認定している資格
日本口腔インプラント学会が認定する専門医の数は、都内だけでも250名以上にも上ります(2023年7月調査時点)。専門医の申請条件は、会員として5年以上活動していることに加え、学術大会や教育講座へ参加しなければなりません。また口腔インプラント指導医の推薦が必要であるなど、インプラントに関する知識や高い技術だけでなく、人望も求められることになります。
ICOI 国際口腔インプラント学会
大規模な学術大会をおこなう国際的な学会
1972年に設立された国際的な口腔インプラント学会であるICOI。米国ニュージャージー州に本部を設置し、世界歯科連盟(FDI)に加盟しています。
歯科医療従事者へのインプラントの質の高い教育に力を入れており、さまざまな活動をおこなっています。ICOI会員に向けた活動では、学術大会を実施。大会長を任命し、東京国際フォーラムやTKP市ヶ谷カンファレンスセンターなどで大規模な学術大会がおこなわれています。
認定している資格
ICOI認定医の資格を取得するための条件は、ICOIの会員であることはもちろん、学術大会への参加経験が1回以上、インプラント治療の臨床経験などが必要。1口腔内の治療が全て終了し、1年以上経過している症例を20症例以上経験していることなどがあります。
一方、指導医は学術大会への参加経験が2回以上あることに加え、臨床経験の豊富さが問われます。1口腔内の治療が全て終了し、1年以上経過している症例40症例以上経験しているなど、認定医の資格を取得するよりも多くの症例経験が必要です
ICOI(国際口腔インプラント学会)の
活動・認定資格などについて詳しく
国際口腔インプラント学会ISOI・DGZI
DGZIと連携した世界的なインプラント医療の促進
国際口腔インプラント学会(ISOI)では、ドイツに本拠地を構えるインプラント学会「DGZI」の日本支部を併設しています。ヨーロッパにて古い歴史を持つDGZIと連携し、開業医主導の学会として活躍しています。専門医や指導医の資格では、ISOIが認定するほかに、DGZI ドイツ本部から認定を受ける資格も。日本に留まらず、世界的なインプラント医療の知識と技術をとり入れています。
認定している資格
認定医は、ISOI会員であることに加え、教育講演の受講などが必須。術前、術後3年の顎関節部を含むパントモ写真と20症例の書類などを提出し、筆記試験を合格すれば認定を得ることができます。
一方、指導医は、ハンズオンセミナーまたは教育講演を4回受講と、専門認定医に比べて多くの講演を受講しなければなりません。さらに術前、術後3年の顎関節部を含むパントモ写真と50症例の書類を提出し、筆記試験と面接試験に合格する必要があります。
ISOI(国際口腔インプラント学会)の
活動・認定資格などについて詳しく
日本顎顔面インプラント学会
口腔外科医に更なるインプラント医療を普及
日本顎顔面インプラント学会の目的は、国民中心で安全なインプラント医療の普及。さまざまな活動をしており、学術大会や学会誌、各種委員会などを通して歯科医療の発展に貢献しています。また、会員の多くが口腔外科学を基軸とする立場の大学教室や病院診療科に属しており、口腔外科医のインプラント医療の知識と技術の向上に努めています。
認定している資格
5年以上、継続して会員であることと、学会の定める研修カリキュラムに従って5年以上のインプラント治療に携わることなどが専門医の資格認定を受けるための条件。
一方、指導医は10年以上、継続して会員であること、学会の定める研修カリキュラムに従って10年以上のインプラント治療に携わることなどが必要となります。
日本顎顔面インプラント学会の
活動・認定資格などについて詳しく
日本先進インプラント医療学会
より多くの人がインプラントを受けられる環境づくり
1998年に設立されたこちらの学会。インプラント治療が社会的に認知されるようになったものの、医療費が高額であることなどが理由で治療が受けられるのは一部の患者だけにとどまっているという現実がありました。より多くの患者に治療が受けられる環境づくりをすることなどを目的に活動を行っています。
認定している資格
専門医は、学会の会員として3年以上活動していることに加え、3年以上のインプラント治療の経験があること、インプラント治療に関連する論文の筆頭著者、かつ学術発表の筆頭演者であることなどが求められます。
一方、指導医は専門医の資格を取得していることに加え、著書や論文、学術講演発表など業績目録を提出し認められれば取得が可能です。
日本先進インプラント医療学会の
活動・認定資格などについて詳しく
AAID(米国インプラント学会)
アメリカ屈指のインプラント学会
アメリカで特に規模の大きいインプラント学会として知られる米国インプラント学会は、インプラント歯科学に関する知識を偏り無く学べる学会として有名。300時間もの講義や実習、外科手術、臨床経験などをオンラインで学ぶことができるほか、実際に経験することも可能です。
認定している資格
認定医になるためにはインプラント治療に関して国が定める基準を満たす教育を受け、実務経験を積むことが必要です。
一方、指導医も同様に教育と実務経験が必要ですが、認定医になるよりも高度な知識と経験が要求されます。
AAID(米国インプラント学会)の
活動・認定資格などについて詳しく
JAO(日本オッセオインテグレーションアカデミー)
市民向けの公開講座を開催
1995年に設立された日本オッセオインテグレーションアカデミー。インプラント歯科治療の研究や実践に携わる歯科医療関係者のグループとして知られています。現在40名ほどが所属し(2023年7月調査時点)、2か月に1度の講師例会や一般市民向けの公開講座を不定期で開催するなど、インプラント治療に関する情報提供を積極的に行っています。
認定している資格
こちらの団体では、オッセオインテグレーテッド・インプラントを用いた医療技術について、インプラント医療の正しい普及並びに医療水準の向上を図ることを目的とした、認定医制度を採用しています。7月に行われる定例研修会で症例を提示。審査を経てパスすれば認定医となることができます。
JAO(日本オッセオインテグレーションアカデミー)の
活動・認定資格などについて詳しく
EAO(ヨーロッパインプラント学会)
世界屈指のインプラント学会の1つ
アメリカのAO、スイスのITIと並んで世界屈指のインプラント学会の1つに数えられているこちらの学会。毎年、欧州各国で持ち回り開催される学会には、世界中から数千人規模の出席者がいることで知られています。
認定している資格
「EAO認定歯科医」という資格制度を設けています。ヨーロッパ全土でのインプラント治療基準向上を目的として設定されました。
受験資格は歯科学位を取得して5年以上の経験を積んでいること、250時間以上の座学と臨床トレーニングを受講することなどが上げられています。
EAO(ヨーロッパインプラント学会)の
活動・認定資格などについて詳しく
ITIインプラント
世界中に15000人以上の会員が在籍
1980年に設立。当時、未開発だったインプラント治療において、研究と発展を追及できる専門家同士のネットワークを築くことが目的でした。現在では、世界各国に15000人以上の会員を抱え(2023年7月調査時点)、専門知識とノウハウ交換の場を提供しています。
認定している資格
「ITI 日本支部公認インプラントスペシャリスト」という制度を設けています。インプラント治療やそれに関連する組織再生に関わる広い学識と高度な専門的技能を持つ人材を養成し、医療の発展や国民のQOLの改善に貢献することが目的。5年ごとに更新しなければなりません。
医師の資格を見るメリット
これまで紹介してきたように、インプラント治療に関する学会は様々なものがあります。一概にどの学会が一番よいとか、どの資格が優れているといったことを決めることはできませんが、認定医や指導医になるにはそれぞれの団体が厳しい基準を設けているので、ある程度の知識や技術があることは間違いありません。それを踏まえた上で、こちらのサイトでは、認定医よりも上位の資格となる指導医の資格を持っているドクターを名医として紹介していきます。
現行の「医療広告ガイドライン」という法律でドクター個人の実績を掲載することは禁止されているため、公式サイトなどにある実績は、基本的にクリニック全体の実績となっており、担当する医師がどの程度のスキルを持っているのか、推し量ることはできません。しかし、指導医や専門医を取得するには症例数がなければ取得できないものがあるので、歯科クリニック選びに役立ちます。
また万が一、イレギュラーなケースで治療が困難な場合、その施術を得意とする他の歯科クリニック・歯科医師を、学会を通じて紹介してもらうことができるなど、よりよい環境で治療を受けることが期待できます。
参考元まとめ
- 日本口腔インプラント学会公式サイト(https://www.shika-implant.org/certification/index.html)
- 国際口腔インプラント学会(ICOI)公式サイト(https://www.icoi-japan.jp/public/shikaku/)
- 国際口腔インプラント学会(ISOI)ドイツ口腔インプラント学会(DGZI)公式サイト(https://kokusai-implant.jp/authorize.html)
- 日本顎顔面インプラント学会 専門医制度規則(PDF)(https://www.jamfi.net/senmoni/PDF/senmonikisoku.pdf)
- 日本先進インプラント医療学会(AIM)公式サイト(https://www.j-aim.info/accreditation/port/)
- 米国インプラント学会(AAID)公式サイト(https://www.aaid-implant.org/expertise-you-can-trust/training-experience-and-credentials/)
- 日本オッセオインテグレーションアカデミー(JAO)公式サイト(https://jaosseo.com/certified/certified)
- ヨーロッパインプラント学会(EAO)公式サイト(https://eao.org/education/eaocertificationexam/)
- ITI公式サイト(https://www.iti-japan.org/specialist/application/)