心疾患
心疾患患者がインプラントを受けられない理由
止血が難しいリスク
心疾患を患っている方は、インプラント治療が難しい場合があります。ペースメーカーを使用している方や心筋梗塞の経験がある方は、血液をサラサラにする薬を服用していることがあるため、インプラント治療に伴う出血で止血しづらいリスクが考えられるからです。そのほか、口腔内の細菌がペースメーカーに付着してしまい、感染性心膜炎を引き起こすリスクも考えられます。
心疾患患者がインプラント治療を受けるには
後遺症がない状態であれば治療が可能な場合も
「日本口腔インプラント学会」より発表されている治療指針によると、虚血性心疾患そのものはインプラント治療の予後に対する危険な要因ではないとされています。また、後遺症がない状態であれば鎮静麻酔を使用することにより、インプラント治療は可能です。よって、心疾患があるからといってインプラント治療は受けられないというわけではありません。しかし、手術によるリスクが増えることは事実です。心疾患患者がインプラント治療を受けるには、どれくらいのレベルの症状なのかを判断する必要があるため、主治医の先生と相談を重ねながら、合併症や症状のコントロール状態を観察して手術が可能か判断していくことになるでしょう。
心疾患患者のインプラントQ&A
心疾患患者の場合どのような歯科クリニックを選べばいいの?
外科手術を必要とするインプラント治療は心臓に大きな負担を与える可能性があります。静脈内鎮静麻酔は心臓への負担を軽減できるため、対応している治療法についても確認するようにしましょう。また、心疾患患者でインプラント治療を検討する際は、自身の主治医と事前に相談を行うようにしてください。かかりつけの内科と連携を行ってインプラント治療を進めていくことが重要であり、病気の状態についてしっかりと確認を取りながら治療を進めてくれるクリニックを選ぶようにしましょう。
リスクを回避する手術の進め方は?
心疾患患者がインプラント治療を受ける場合、手術中にショックや心不全などが起こらないようにすることが重要です。手術台に上がる動作でも急激な血圧上昇の危険性もあるため、随時血圧状態をチェックしながら治療を進めていくことも大切になります。術中は、生体モニターで脈の動きを注意深く観察しながら手術を進めていき、身体状態の急変に備え、薬剤を準備しておくリスク管理が重要です。
心疾患患者のインプラント症例
70代の男性がインプラント埋入手術を行った2ヶ月後、全身の倦怠感で内科を受診したところ劇症型心筋症による低心拍出量症候群と診断されました。大動脈バルーンパンピング法により循環が維持され、次第に心機能と伝達障害が改善し、退院。インプラント挿入手術との関連はないと考えられました。この男性は、以後循環器内科で治療を受け、症状は軽快。3ヶ月後にはインプラントの2次手術を行っています。循環器内科の医師と連携を取り、術中は生体モニターを設置し心電図を観察しながら、急変に備え薬剤の準備をしていましたが術後は良好な経過となっています。その後、ほかの部位にもインプラント手術を実施しており、計3回の手術は良好な状態で終了しています。このような結果から、循環器内科の主治医からの許可および連携をしっかりと取りながらであれば、心疾患患者であってもインプラント治療を安全に受けられる可能性は高いと言えるでしょう。
参照:東京歯科大学麻酔学講座・短報「劇症型心筋炎既往患者に対するインプラント手術のための静脈内鎮静法経験」