歯周病
歯周病患者がインプラントを受けられない理由
歯周病は感染する
歯周病の患者さんがインプラント治療を受けられないのは、ほかの歯に感染してしまうからです。歯周病の原因はお口の中にある細菌で、それが歯と歯茎の間に集まりプラークという細菌叢を形成して増殖していきます。プラークには10億を超える細菌が生息しているといわれていて、それがさらに増殖しながら歯の奥にまで広がっていきます。ですから、歯周病は現在炎症を起こしている歯だけではなく、ほかの歯にも細菌が広がってしまうことが考えられます。それを食い止めるために、まず歯周病治療をおこなう必要があるのです。
インプラントも歯周病になる
もし、歯周病を治療しないままインプラントを埋入してしまえば、インプラントにも歯周病菌が感染してしまいます。虫歯と違って歯周病は歯の実質に作用するものではありませんから、インプラントを埋入した周囲の組織に感染します。感染した状態を「インプラント周囲炎」といって、歯周病と同様に骨吸収が促進されてインプラント体が脱落してしまう恐れがあります。
歯周病患者がインプラント治療を受けるには
まず、歯周病の検査をおこなう
歯周病の人がインプラント治療を受けるには、まずお口の中の状態を把握することからはじめます。精密検査とレントゲン検査などを通して、プラークがどれくらいあるのか(プラーク指数)、炎症の評価(歯肉炎指数)などを調べます。また、歯周ブローブという先端が尖った器具を利用して、歯肉の縁から歯周ポケットの深さ(プロービングポケットデプス)、ブローブで触れたときの出血(ブロービング時の出血)も評価します。この検査によって、チャートを作成し口腔内清掃を主体とした治療をおこないます。
歯周病がひどいと抜歯することも
治療をおこない、プラークコントロールが良好で、歯周ポケット内の炎症が20%以下になれば、インプラント手術に移行します。しかし、改善が思わしくない場合には歯肉除去などの外科手術も検討、保存できない歯に関しては抜歯も検討されます。
歯周病患者のインプラント症例
今回の調査は、インプラント治療の前に歯周病の治療をおこなった人に対して、埋入したインプラントがどうなったかを追跡調査したものです。
まず、全体的な残存率を見ると、5年生存率は98.7%でした。インプラント体の形態別に見ると、テーパード型とストレート型での有意差は認められませんでしたが、骨吸収の進行具合ではストレート型のほうが吸収されていないという結果が出ています。また、骨吸収が進んでいた歯周病患者でも、5年生存率は90%という結果になっています。
このような結果から、歯周病患者でも治療をしっかりとおこなうことにより、インプラント生存率は通常と同程度だったことがわかります。そして、何よりも大切なことはインプラント埋入後のメンテナンスで、適切なメンテナンスによって歯周病の既往があってもインプラント治療が成功する確率が高まるのです。
参照元:明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野「歯周病患者に対する骨接合型インプラント治療に関する臨床的研究」
参考文献
- 日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2016」
- 日本歯周病学会「歯周病患者におけるインプラント治療の指針」(pdf)(http://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_implant.pdf)